「進化はしても、変化はしない。」普段着のお酒を醸す(群馬県太田市/島岡酒造)

「進化はしても、変化はしない。」普段着のお酒を醸す(群馬県太田市/島岡酒造)

2024年7月より「群馬泉」を新規に取り扱うことに伴い、蔵元である島岡酒造さんを訪問してきましたので、その酒造りの方針や哲学、それを支える蔵の環境等とともに、ご紹介します。

はじめに
「群馬泉」といえば、群馬県太田市由良町に所在する日本酒の蔵元であり、飲酒経験が豊富な日本酒好きや飲食のプロから絶大な人気を誇るお酒のひとつではないでしょうか。

その蔵元である島岡酒造さんは、文久3年(1863)の創業以来、赤城山からの湧水豊かなこの地(近くには、以前はサッポロビールのビール工場もありましたね。)で、地元の酒米と、「生もと系山廃造り」にこだわり、丁寧に酒造りをしている、生産量500石弱の小さな酒蔵です。

酒造りの方針

現在の蔵元で杜氏である島岡さんは、昔から「毎日飲んでも飽きない普段着の酒」づくりを行ってきていて、「基本的な味は変えない」「華やかな酒もおいしいとは思うけど、自分たちの味とは違う」といいます。

そのため、地元群馬の酒造好適米(「若水」等)や7号酵母の採用、麹や掛け米の割合等の仕込みは、ほとんど変えておらず、加えて「山廃酛(やまはいもと)」による酒造りと継承に並々ならぬこだわりがあります。

山廃酛は、酒母を作る過程で、人口の乳酸を使わず、蔵付の天然の乳酸を使いながら酒母を培養する方法であり、雑菌の繁殖をいかに防ぐかがとても難しく、センシティブな技術を要し、また手間もかかる方法です。この方法で安定的に目指す酒質を維持することはとてもとても難しいことなのです。

また酒造りの骨格は「変化させない」一方で、工程の全ては絶えず見直し「進化させている」。洗米、蒸米の放冷時間、ブレンド方法、清掃に至るまで…。
機械化をすれば、効率は上がり、酒造りも安定するはずですが、最新の設備はなく、基本に忠実で丁寧な作業によって支えられています。

蔵内の状況


米を蒸すための和釜(たいへん珍しい)


和釜用の窯の内部


5S(生産現場の基本!)が徹底され、清潔で整理整頓が行き届いた麹室(こうじむろ)


酒を仕込み、発酵させるタンク(仕込み蔵)


山廃酒母の仕込み用タンク(酒母室)

このようにして醸され、生まれる「群馬泉」。派手さはなく、骨太で寡黙なようでいて、日本酒の原点、基本に立ち返ることができるとても魅力的で高品質なお酒として、ぜひ一度、お試しいただければと思います。

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